石破首相「日本の財政はギリシャより悪い」が国内外に大きな波紋を広げる

2025年5月19日、参議院予算委員会で石破茂首相は、日本の財政状況について「間違いなく極めてよろしくない。ギリシャよりも悪い」「金利がプラスに転じており、財政状態は良くない」と発言しました。消費税減税の声が高まる中、石破首相は赤字国債による財源確保に反対し、税収増に対し社会保障費も膨らんでおり、減税の余裕はないと説明しました。

首相は、金利上昇や信用喪失による債務不履行のリスクに警鐘を鳴らし、将来世代への負担や経済力の低下も懸念しました。その上で、日本の財政はかつて危機に陥ったギリシャより悪いとの強い危機感を示しました。

石破首相 首相官邸HPより

たしかに、政府総債務残高(対GDP比)だけを見ると2009年当時のギリシャより悪いようです。

しかしこのような発言を首相が公式の場で行う必要があったのかという疑問の声が上がっています。

この「日本はギリシャより財政状況が良くない」という石破首相の国会答弁が、市場での長期国債売りを招いているとの指摘があります。

日本は通貨主権を持ち、債務は国内で消化され、対外資産も豊富で、経済の基盤も強いことから、単純な比較は誤解を招くとの批判もあります。


日本の財政状況を例える際にギリシャを引き合いに出したことについて、外交的な配慮も欠けるのではと疑問の声も。

ギリシャ危機は2009年、政権交代により財政赤字の隠蔽が発覚し、赤字がGDP比13%超に修正されたことで信用を失い、深刻な財政危機に陥りました。公務員の過剰な雇用や年金制度の過剰な優遇も背景にありました。

その後、構造改革と高インフレ、外資の流入などにより債務の圧縮が進み、成長率も回復傾向にありますが、実質GDPは危機前より約3割低いままです。

参照:米国債格下げとギリシャよりも悪い日本の財政 野村総合研究所

ギリシャは緊縮財政で債務も圧縮しましたが、日本はいまもGDP比約235%の債務を抱えています。ギリシャはユーロを使い通貨発行ができなかったため、EUやIMFの支援と引き換えに厳しい緊縮を強いられました。この対応に「自国通貨で国債を出せなかったから破綻した」という反論もありますが、逆にユーロ建てだったからハイパーインフレを避けられたという見方もあります。債務の持続性は通貨ではなく政府への信頼で決まります。

石破首相の発言は、今夏の参議院選挙で争点となる見込みの消費税減税論議に、予想外に大きな一石を投じるものとなりました。