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この記事では、運輸・倉庫業の固定資本減耗について国際比較してみます。
1. 運輸・倉庫業の固定資本減耗
産業別の固定資本減耗について国際比較をしていきます。
今回は、卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業と共に一般サービス業を構成する運輸・倉庫業の固定資本減耗について注目してみます。
輸送の自動化も進むとみられる分野だけに、現在までの固定資産の蓄積具合についても気になるところではないでしょうか。

図1 経済活動別 労働者1人あたり固定資本減耗 日本
OECD Data Explorerより
図1が日本の労働者1人あたり固定資本減耗の推移です。
今回着目する運輸・倉庫業(オレンジ)は、全産業の中で中程度の水準となります。
運輸・倉庫業は、輸送用機器(トレーラー、タンカーなど)や、倉庫と言った固定資産の必要な産業です。
さらに、経済活動別の統計データは、民間・公的の区別はありませんので、公共投資に含まれる道路や橋梁と言った固定資産もこの産業に含まれるものと考えられます。
2. 労働者1人あたりの推移
運輸・倉庫業の固定資本減耗について労働者1人あたりの水準(名目、為替レート換算値)の推移を見てみましょう。

図2 労働者1人あたり 固定資本減耗 運輸・倉庫業
OECD Data Explorerより
図2が主要先進国の運輸・倉庫業における、労働者1人あたり固定資本減耗の推移です。
日本は1990年代に非常に高い水準に達した後は横ばい傾向で、2000年代頃から他の主要先進国と同程度で推移しています。
アメリカが上昇傾向ながら低めの水準、イタリアが停滞傾向ながら非常に高い水準に達しているのが特徴的です。
3. 労働者1人あたりの国際比較
最新の2022年の水準について国際比較してみましょう。

図3 労働者1人あたり固定資本減耗 運輸・倉庫業 2022年
OECD Data Explorerより
図3がOECD各国の2022年の国際比較です。
日本は16,792で、OECD30か国中16位、G7中4位です。
先進国の中では中程度の水準になるようです。
4. 対国内総生産比の推移
続いて、各経済活動における国内総生産(Value added, gross)に対する比率でも比較してみましょう。

図4 固定資本減耗 対国内総生産比 運輸・倉庫業
OECD Data Explorerより
図4が運輸・倉庫業における固定資本減耗 対国内総生産比の推移です。
各国で2020~2023年あたりで上昇している事が確認できます。
コロナ禍において、この産業が大きく影響を受けたことを示すグラフとなっています。
日本も2020年以降急激に上昇していて、2022年でもまだ元の水準に戻っていません。
相対的にこの産業での固定資産の維持負担割合が増大している事になります。
5. 対国内総生産比の国際比較
最後に、対国内総生産比の国際比較をしてみましょう。

図5 固定資本減耗 対国内総生産比 運輸・倉庫業 2022年
OECD Data Explorerより
図5が2022年の固定資本減耗 対国内総生産比の国際比較です。
日本は32.4%でOECD30か国中6位、G7中1位となっています。
ただし、図4で見た通り、この産業ではコロナ禍の影響を受けていて、2022年の時点で例年並みの状況に戻っている国もあれば、高止まりしている国もある事にご注意ください。
6. 運輸・倉庫業の固定資本減耗の特徴
今回は経済活動のうち運輸・倉庫業の固定資本減耗について着目してみました。
運輸・倉庫業は輸送するためのインフラ(道路・橋梁など)と手段(トラック・船など)の両方で固定資産の蓄積が必要な産業となります。
日本は先進国の中では中程度の固定資産と言えます。
この産業は2024年問題と大きく報道された事もありますが、2024年はどのような状況だったのか、統計データが更新されたら確認してみたいと思います。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2025年5月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。