中谷防衛相「搭乗員らしきもの」発言修正 会見やり直し 空自機墜落
中谷元・防衛相は16日午後6時45分ごろ、防衛省で臨時の記者会見に臨み「搭乗員らしきものを発見し、収容した。損傷が相当激しい」と述べた。「もの」との表現に報道陣から疑問の声が上がる中、詳細を説明せずに退庁。だが約40分後に再び登庁し、午後8時過ぎ、会見をやり直した。
率直に申し上げて意味がわかりません。大臣は遺体らしいが、確定はできないよと、いうニュアンスでお話されたのではないでしょうか。別に遺体をモノ扱いしたわけではないでしょう。じゃあ遺体じゃなければ記者クラブはなにか責任を取るのでしょうか?

中谷元防衛大臣 防衛省HPより
これはある意味「情緒」の範疇です。しかも会見をやり直す必要があったのでしょうか。
発言を訂正するのであればメールで済んだはずです。このような大臣吊し上げみたいな会見が必要だったのでしょうか?
対して以前会見でぼくの質問に対する事実誤認は認めません。
防衛大臣記者会見 令和7年3月18日(火)における質問
防衛大臣記者会見 令和7年3月18日(火)におけるぼくの質問です。

そしてフジテレビ政治部・防衛省担当 鈴木杏実記者と朝日新聞のこれまた政治部の田嶋慶彦記者はこの発言をそのまま引用する形で取り上げて記事にしました。
これについて内局の報道室は事実誤認はなく、訂正の必要はなしとしています。
防衛大臣記者会見 令和7年3月18日(火)における質問
防衛大臣記者会見 令和7年3月18日(火)におけるぼくの質問です。

その次の回で、件の大臣の発言は誤りではないかと質ました。
記者:
常識的に考えれば、別に航空とか、軍事の専門知識がなくても、部品が無ければ、航空機飛ばないと思うのですけれども。大臣:
確認してみます。聞いたのは、新しいものをつくる上において、部品の供給は行っていないというような話を聞いています。記者:
ただ、御発言をそのまま信じるとですね、部品をもう作っていないんだと、ということになるわけで、消耗部品を作っていないというような認識にとられるのではないでしょうか。大臣:
当然そのメンテナンスというのは必要ですからね。現在の航空機調達に支障がないような程度の部品の調達というのはあるとは思います。
この件に対する報道室の回答は以下の通りです。
〇御指摘の3月14日と18日の会見における中谷大臣の発言を整理すれば、
* C-17は新造されていないと承知している
* 運用中のC-17の維持整備に必要な部品を調達することはあると認識して
との趣旨を述べたものと考えております。
これは相反することを言っておられて、件の発言を訂正していません。
再度質問した結果の回答が以下の通りです。
* 繰り返しになりますが、3月14日と18日の会見における中谷大臣の発言
を整理すれば、・C-17は新造されていないと承知している・運用中のC-17の維持整備に必要な部品を調達することはあると認識しているとの趣旨を述べたものと考えており、誤りであったとは認識しておりません。
これは二回の会見の発言を意図的に混同します。
第一回目の発言は完全に事実誤認です。それ対して追求した二回目の会見の発言ではパーツは作っていない、作っているとパラレルな発言をされています。
仮に「当然そのメンテナンスというのは必要ですからね。現在の航空機調達に支障がないような程度の部品の調達というのはあるとは思います」をもって、そのように報道室が主張するのであれば14日の発言は誤りだったことなります。ところが報道室は「大臣の発言は無謬である」との回答を繰り返しているだけです。この件はさらに質問を行っています。
そんななかでおこったのが件のT4事故について発言の訂正、しかも会見のやり直しまでしたわけです。随分扱いが違いませんか。
なぜぼくの指摘には訂正しないのか。2つの可能性があるかと思います。
- 記者クラブの追求には訂正をいれるが、記者クラブ非会員の会員の指摘には間違いを認めない。
- 「お気持ち」は訂正するが、事実誤認は訂正しない。
航空機が消耗部品無しで運用できないことは中学生でも理解できる道理です。その簡単な事実をどうして認められないのか。
だから質問者だったぼくはこの発言を引用する記事は書きませんでした。中学生レベルの常識があり、どうしても引用したいのであれば、報道室に大臣の発言は間違ではないのか?と言わせるでしょう。A棟10階の記者室から広報課まで歩いて30秒ですよ。
またぼく以外の記者クラブの記者たちが、この発言をおかしいと思わなかったのでしょうか。そう思っていたならば大臣発言の訂正を求めていましたよね。今回のT-4事故みたいに。
思いつくのは、フジテレビ政治部・防衛省担当 鈴木杏実記者と朝日新聞のこれまた政治部の田嶋慶彦記者が、そのまま引用する形で記事したことです。大臣が訂正するとフジテレビや朝日も「誤報」を出したことになり、訂正しなければならない。
率直に申し上げて軍事とか航空の知識とか以前に中学生レベルの常識がないやつが記事を書いていていいのか? また仮に記者書いても普通デスクや校閲が差し返すでしょう。校閲が見るのは誤字脱字だけではありません。2、30年前の朝日の校閲だったら突っ返すのではないでしょうか。
記者クラブの記者は軍事に興味があるわけでもないし、単に会社の辞令で配属されるだけです。そして短期に転属します。専門知識は期待できない。
ですが専門知識どころか、中学生レベルの常識もない「報道機関」が会見、その他の取材機会を独占して非会員を排除しています。事務次官との懇談会も我々非会員の記者は排除されています。こういうところか「馴れ合い」や「癒着」は生まれませんか?
また国民の知る権利は担保されますか?
仮に大臣や内局の広報が記者クラブ様のご機嫌を損ねないために、訂正をしないのであれば由々しき問題です。
不思議なことに人権だの、報道の自由にやかましい弁護士の団体や日本ペンクラブも記者クラブ問題には全くだんまりです。
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【有料記事】
Note に有料記事を掲載しました。
Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
防衛省、陸自用汎用無人機開発へ
ES&D誌に寄稿しました。
Japanese MoD initiates project to develop VTOL UAV for ground forces
財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料
防衛
防衛(参考資料)
財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料
防衛
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編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2025年5月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。