こんにちは、自由主義研究所の藤丸です。
「初心者のための経済学シリーズ」の第3回目は、
「お金とは何か?」です。
お金。
ちなみにシリーズ第2回は「コストとは何か?」です。シリーズですが、完全に独立しているので3回目からでもお読みいただけます。

「お金は悪の根源だ!」
と言われることがあります。
「お金は強欲と同義であり、お金を欲しがることは本質的に悪いことだ」
と教えられることさえあります。
しかし、これは違います。
お金は人類史上、最も重要な発明のひとつです。
たとえば、家、スマートフォン、本、新しいゲーム、新しい服、車、お気に入りのレストランでの食事など、さまざまなものが人生を豊かにしてくれます。
しかし、もしお金を存在せず(お金を使ってこれらを購入することができず)、欲しい物を自分自身で作るしかなかったとしたら、これほどの豊かなものを享受できるはずがありません。
幸いなことに、お金のおかげで、他の誰かが作ったものを購入することができます。つまり、自分自身ですべてを生産する必要がなくなったのです。
自分ですべてを生産するのではなく、自分の得意な仕事に特化(専門化)するのです。
その特化した仕事でお金を稼ぎ、そのお金で他の人が作った製品やサービスを購入できるのです!
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「当たり前やん!」と思った方、そうです。そのとおりです。
しかし、このあたりまえのように思えることは、いつの時代も常にそうだったわけではありません。
お金が登場する以前の社会では、人々は「物々交換」によって、モノを交換していました。しかし、これにはすぐに限界がきます。
物々交換は、
「自分の持っているモノ」を相手が欲しがっていて、
「自分の欲しいモノ」を同じ相手が持っている、
という、そんなレアな相手がいた場合にのみ、交換が成立します(「欲求の二重の一致」と言います)。
例えば、ボブが魚を持っていて、トムが飲み水を持っているとします。
お互いが相手の持ち物を欲しがった場合、ボブとトムの二人は、魚と水を直接交換することができます。
しかし、もしトムが、ボブの魚を欲しがっていない場合、ボブは水を欲しければ、まず他の誰かと「トムの欲しい何か」を交換し、その後でそれと水を交換しなければなりません。
これが「間接交換」です。
歴史上のさまざまな社会では、「誰もが欲しがる特定のモノ」がありました。
「誰もが欲しがる特定のモノ」を持っていれば、それとの交換に応じてくれる相手を探すのは簡単です。
「誰もが欲しがる特定のモノ」は、「通貨(お金)」と呼ばれるものになりました。
人類の歴史を通して、塩、タバコ、穀物、貝殻、家畜、毛皮など、あらゆるものが通貨として使われてきたのです。
様々なモノが「通貨」として使われてきました
やがて多くの社会は、いくつかの金属を通貨として使うようになりました。
例えば、金や銀です。これらは、通貨の最も望ましい形態でした。
なぜでしょうか?
多くの社会の人々は、これらの金属を、装飾品や贅沢品、工業用として価値あるものと見なしましたが、それだけではありません。
金属通貨には、他にも多くの利点があります。
金属は壊れにくく、均一で分割可能です。
純金の2オンスはどれも同じ量であり、硬貨に加工すれば持ち運びも容易です。
また希少性が高く採掘が難しいため、木から生えるかのように新しいお金をたくさん作ることはできません。
お金の発明こそが、人類文明の真の繁栄を可能にしたのです。
なぜなら、自分で物を作れなくても、購入できるようになったからです。
このことで生活に自由と選択肢が生まれました。
必要最低限の生活用品で自給自足するのではなく、自分の職業を選べるようになったのです。
農夫、仕立て屋、船長、商人など、さまざまな職業を選択できるようになりました。
「分業」と呼ばれるこの専門化により、人々はより知識を深め、技術を磨き、より複雑で有用なものを生産できるようになりました。
そして、すべての人々の生活の質が向上したのです。
また、お金のおかげで、将来のために貯蓄することも容易になりました。
仕事で稼いだお金の一部を貯蓄することで、新築の家など大きな買い物もできるようになったのです。
当然、人々が貯蓄をするようになると、そのお金を安全に保管するための新しい方法が求められるようになりました。
こうして、銀行が誕生しました。
人々は硬貨を安全に保管してもらうために銀行に預け、「預り証」を受け取ります。
後に、「預り証」と引き換えに預けたお金を引き出すことができるのです。

銀行に保管してもらった金貨を、その「預り証」を渡し引き出します
やがて、この銀行が発行した紙の「預り証」自体が、一種の通貨(紙幣)となりました。
なぜなら、その「預り証」は他人と交換でき、交換した相手は、その「預り証」をその分の金貨に交換することができたからです。
実際、今日の通貨の名称の多くはこのシステムに由来しています。
たとえば「ドル」という名前は、かつてスペイン語で「金の重量単位」を意味していました。
紙幣が普及すると、政府は紙幣で換金できる金を蓄えていなくても、簡単に新しいお金(紙幣)を印刷することができました。
歴史上、これは政府が新しいお金を作り出すための一般的な方法でした。
なぜなら、税金を徴収するなどの他の方法よりも、紙幣印刷のほうが簡単だったからです。
税を集めるよりも紙幣印刷のほうが手軽だったため、政府はこれを多用しました。
ただし、これは政治家には都合が良いことでしたが、私たち一般市民には悪いことでした。なぜなら、このことで、私たちの通貨の価値が下落してしまったからです。
これが「インフレーション」です。
20世紀には、政府が通貨を完全に掌握するようになりました。
アメリカではかつて、ドルを金に交換することができました。
これは「金本位制」と呼ばれていました。
1913年、アメリカは中央銀行であるFRB(連邦準備制度)を設立し、金の裏付けなしに新たなドルを発行し始めました。
1933年、フランクリン・ルーズベルト大統領は民間人の金保有を禁止しました。
1971年、リチャード・ニクソン大統領が外国政府との金とドルの交換を停止しました。
それ以降、アメリカ人のドルを裏付ける価値あるものは何もなくなったのです。
結果として、FRBが創設される100年前の金1オンスの価格は19ドル39セントだったのに対し、創設100年後には1204ドル50セントになりました。
なぜこのようなことが起こったのでしょうか?
政府が通貨発行の独占権を持ったことで、政府は大規模な戦争や公共事業のための資金を容易に調達できるようになりました。
しかし、その代償として、私たちの通貨価値と貯蓄が犠牲になったのです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
お金(通貨)については、これまで政府が通貨に行ってきたことなど、非常に重要なことがたくさんありますので、別シリーズでも更に詳しく解説予定です。どうぞお楽しみに。
編集部より:この記事は自由主義研究所のnote 2025年5月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は自由主義研究所のnoteをご覧ください。